4月27日にレイを産み落とし、4月29日にピンキーは逝ってしまった。
と同時に、世間ではゴールデンウイークに入り、華やかな週が始まっていた。
有り難いことにエオの谷にも、予約のお客さまが増えていた。
いつもなら嬉しい悲鳴なのだが、この時ばかりは、精神的にも物理的にも本当の意味の悲鳴をあげてしまいそうな状況の中にいたのを覚えている。
レイの母親代わりとなってから、なるべくレイのそばにいてやりたかったし、実際身体的な問題を抱えていたレイだったから、そばにいる必要もあったのだ。
昼間はお客さまの合間をみては、レイのもとに走り、neotearのどちらかが手が空いたときは、なるべくレイのそばにいた。
そして、夜はレイの厩舎に交代で付き添った。
まだ寒さが残る夜、レイと一緒に馬着を着て、レイの体をさすったりもした。
ひとつの馬着の中で、レイに寄り添いうたた寝をした瞬間、急に首を持ち上げたレイの頭が直撃し、暗闇に星が舞うような衝撃が走ったこともあった。
そんな嵐のような時間の流れの中で、レイが愛おしくてたまらなくなる瞬間がある。
レイのそばから離れ、また戻った時、レイはneotearの姿を見ると、「ブブブ…」と唇を震わせ母馬を呼ぶ声で、neotearを呼んで立ち上がろうともがくのだった。
この子を生かしたい。
例え何を引き換えにしてもいい。
そう思わずにはいられなかった。
しかし、奇跡はそう容易くおこってはくれなかったのだ。
ある時を境に、レイは目に見えて衰弱し、立とうともがくこともしなくなっていた。
ミルクを自分の力で吸うこともなくなり、こちらが無理やり流し込むのを、ただ受け入れているだけ…。
いつしかそんな状態になっていった。
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