2010年10月9日土曜日

希望の光…5

ピンキーの死で、ひとり残されたレイ…。

この子だけは…
そう心に誓ったものの、未来はあまり明るいものではなかったのだ。

生まれたばかりの子馬は、通常1時間もすれば、自ら立ち上がり、母馬の乳首を探し始める。

しかし、その「通常」のことがなされるには、実は重要な最低ふたつの条件が満たされなければならない。

ひとつめは、当たり前のことだが、体が正常であること。
ふたつめは、母馬の励ましがあること。


生まれ落ちたレイにとって、ふたつめの条件はほとんどないに等しかった。
瀕死のピンキーは、自らが立つことさえ、ままならなかったのだから…。

そんな状況でも、母たるものは凄いもので、虚ろな目でも必死に子馬を探し、か細い声でも必死に呼び続けていたのだ。

しかし…自分の体を動かすことすら難しかったピンキーは、レイを舐めてあげることも、鼻先で押しやることも、できないでいた。

そのピンキーの代わりをと、tearも出来る限りのことをしたのだが、レイはやはり動かぬピンキーを求めていた気がする。

そんな中、実はもう一つ…。

レイの前肢は、伸びきることがなく、後ろ肢には力が入らない。
先天的なことのようだった。

ということは、立つための最低限の条件が満たされていないことになる。


そんなわけで、レイは一瞬は立てるものの、立った状態が持続することはなかったのだ。

獣医さんも、立つことが出来ないのは致命的だと…。


それでも、目の前のレイは懸命に生きようとしているのだ。
自分たちが諦めるわけにはいかなかった。

たとえ獣医さんがサジを投げようと、常識では考えられなくても…。

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